今後のエネルギー政策で必ず行わなければならないこと

今後のエネルギー政策を進めるにあたって、必ず行なわなければならないことがあります。
それは、原子力発電の特別扱いをやめることです。

原子力発電は1955年に原子力基本法が制定されて以降、国を挙げての開発が行なわれてきました。1970年代にオイルショックが起きてからは特に、化石燃料を使用しない発電として政府の期待をかけられました。しかし、当時は太陽光発電、潮力発電など再生可能エネルギーの開発がさほど進んでいませんでした。現在は、太陽光発電風力発電地熱発電など実用化され、コストも下がっています。福島第一原発事故により国策として進めてきた原発のさまざまな問題点が浮上した今、国策としての枠組みを再考し、他のエネルギーと同じスタートラインに並べて検討することが必要です。それには二つのことが必要です。

1.原子力発電の国策としての枠組みを変えること。

経産省原発の推進と規制を兼ねている現状を変え、エネルギー政策を一から検討する仕組みを設けることが必要です。
まず原子力委員会の見直し。原子力委員会内閣府の組織で「原子力の研究、開発及び利用に関する事項(安全の確保のための規制の実施に関する事項を除く。)について企画し、審議し、及び決定する」と原子力基本法にて定められています。内閣府の概要を見ると(http://www.cao.go.jp/about/pmf_index.html)、原子力だけが突出しているのがわかります。本来なら、ここはエネルギー全般を論じるべきです。原子力委員会を存続させるのなら、その上に「エネルギー政策委員会」があってしかるべきです。

また、並行して必要なのが原子力関連の法令を改廃すること。
原子力発電は数々の法令で特権的な地位を与えられています。電源開発促進税法(火力なども含まれるが、実際は原子力発電への投入が圧倒的に多い)。原子力損害の賠償に関する法律。法定外税(核燃料税−電力会社から自治体にお金を流す仕組み)。環境影響評価法放射性物質除外項目(環境省が有害物質を規制する枠組みから放射性物質だけを除外している)。これらの特権をなくしてこそ、原子力発電がゼロベースでエネルギーの一つとして検討される土台ができます。


2.電力会社の地域独占をやめるために、送配電の公営会社を設立して新規電気事業者の参入を促すこと。

日本の電力をめぐる枠組みは電気事業法によって定められています。家庭に電気を供給する事業者「一般電力事業者」になるには経産省の認可が必要ですが、現在は東電などの電力会社が地域独占を行っています。送配電網も電力会社が保有しているため、他の事業者の参入の余地はありません。一部自由化はあるものの規模は小さいです。(参照:http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/genjo/genjo/jigyousya-gaiyo.pdf
日本の電力会社は、地域独占の特権を享受して高価格の電気料金を維持してきました。さらに、競合他社がないことをいいことに杜撰な原発運営を続け、さんざん事故や情報隠しを繰り返し、ついには福島第一原発の事故につながりました。通常の会社なら、東電は社会的に許されず、財政的にも破綻して即座に消滅しているはずです。もう、「電気の安定供給」を理由に特権を与え続ける理由はありません。東電は原発事故によって社会に大損害を与えただけでなく、電力供給量を隠して停電を行うという犯罪行為まで行っているのです。東電に任せていては電気の安定供給はあり得ません。送配電を既存電力会社から分離して、新規電気事業者を参入を促し、安全性と低料金を実現すべきなのです。