5/3段階の東電賠償案は、犯罪的なまでに東電に甘い

5月3日の報道で、東電の原発事故賠償案が報じられました。

「東電の賠償、電気料値上げで…政府・民主容認へ」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110503-OYT1T00817.htm?from=main1

 数兆円と想定される賠償金を支払う枠組みは、東電のリストラと毎年の利益から捻出するのが原則だが、それだけでは資金が足りないためだ。今回の枠組みで資金拠出を求められる他の電力会社についても、一定の電気料金の値上げを認める方向だ。

 電気料金の値上げは国民の負担増となるため、東電だけでなく、他の電力会社も含めて徹底したリストラを求めたうえで、賠償総額が見通せるようになってから値上げ幅を検討する。

 安易な値上げにならないよう政府が厳しくチェックするが、標準的な世帯の場合、月数百円程度の大幅な値上げとなる可能性がある。

一言で言えば、これは被害者救済案ではなく、東電救済案です。こんな案は絶対に認めてはいけません。
第一、他の電力会社は東電の事故の賠償を一部負担することに難色を示しています。実際、他の電力会社が支払う理由は一切ありませんし、もし支払いを行った場合、株主から訴えられるおそれもあります。

この賠償案が一番よくないところは、東電の今までのあり方を容認しているところです。東電およびそのほかの電力会社、は政府に認められている地域独占と総括電価方
式により、聖域とも言える地位を得ています。競合する電気事業者を排除した上で、人件費や広告費を載せ放題の料金体系にしています(参照記事)。この方式では費用(原発のコスト、他の企業より高い水準の給料、地域独占なのに大量に投入する広告費)をかければかけるほど利益が増える、という民間事業者からするとありえないシステムになっています。これほど政府に手厚く守られている企業は他にありませんし、社会主義国でもここまでやりたい放題の経営が許されることはなかったのではないでしょうか。

この地域独占と総括原価方式こそが原発の安全性をないがしろにしてきた東電の体質を生み出したものなのです。それなのに、重大な原発事故を引き起こして数十万人の生活の命を脅かしている東電を政府保証で救済を行うなど、絶対に許されません。政府は「電気の安定供給」を救済理由としていますが、東電の体質を許していては電気の安定供などありえません。現に、東電の体質があったからこそ原発事故が起き、大口需要家への規制も行わずに一般人へ犠牲を強いる停電が行われたのです。

では、賠償案はどのようにすべきか。
通常の企業だったら、巨額の賠償により債務超過に陥るのであれば会社整理手続きに入ったりするのが通例ですが、東電の場合は安定的な現金収入が見込めるので即更生手続きとはならないでしょう。問題になるのは借入金の返済ですが、今まで高い水準だった人件費を削減し、それでも足りない部分は資産売却、たとえば送電線の売却をすれば返済も滞らずに済むのではないでしょうか。
また、東電内の資産だけでなく、東電が核燃料サイクル事業用に積み立てた2兆円超の資金があります。核燃料サイクル事業がもんじゅの事故もありままならない以上、その積立金を原発事故に賠償に充てるのが妥当だと思われます。

もし、この東電賠償案を菅内閣が強行するのなら、まちがいなく国民の大反対に遭います。そしてその矛先は菅内閣だけでなく、与党である民主党へも向けられるでしょう。民主党菅内閣と心中するつもりなのでしょうか。