原発を止めてしまったら、電力が不足する?

Q.日本の電気の30%を占める原子力発電を止めてしまったら、電力が不足して経済も生活も成り立たなくなるんじゃないの?

A.いいえ、現在持っている火力、水力発電で十分です。

原発は安全のため定期検査を行い、その時のためにバックアップの火力発電を持っています。そうでないと、定期検査のたびに停電が起こっていたはずです。
津波で被災した火力発電所が復旧すれば、心配することはありません。


●根拠1 国際エネルギー機関(IEA)2011年3月15日の見解

ロイター2011年 03月 15日 23:07 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20049520110315

 [ロンドン 15日 ロイター] 東日本大震災に伴う原発事故を受けて、国際エネルギー機関(IEA)は15日、日本は原子力発電の不足分を補うだけの十分な石油火力発電による余剰能力を有している、との見解を示した。

 IEAは月次報告書で「実際には、液化天然ガス(LNG)および石炭も使用することで需要に対応できる可能性が高いが、LNG、石炭の両セクターにおいては余剰発電能力がより限定的であるようだ」と指摘している。

 IEAの推計によると、日本は2009年に石油火力発電能力の30%しか使用しておらず、平均で日量36万バレルの原油・燃料油を使用し、100テラワット時余りの電力を生産した。

 IEAはまた「60テラワット時の不足分すべてを石油火力発電で補った場合、石油消費量は年間ベースで日量約20万バレル増加する見通し」としている。


●根拠2 環境エネルギー政策研究所(ISEP)レポートによる東電電力供給力と夏の需要量の比較

河野太郎ブログ2011/03/31より
http://www.taro.org/2011/03/post-969.php

ISEPによれば、東電管内の供給力は下記の通り。
ケース1は茨城と福島の発電所が全て停止、千葉、東京、神奈川の地震停止及び定期点検中の発電所が復旧するケース。
当面の供給力はこの程度。

ケース2はケース1プラス鹿島石油火力と長期計画停止中の横須賀石油火力7−8号機が復旧するケース。
2011年夏にはこの程度が期待できる。

ケース3は、ケース2プラス長期計画停止中の横須賀石油火力3−6号機が復旧するケース。2011年夏楽観ケースだ。

(万kW)     ケース1  ケース2  ケース3
東京電力 水力    218   218   218
      火力   2717  3227  3367
     原子力    491   491   491
東京電力合計    3426  3936  4076

他社受電 水力    529   529   529
      火力    200   573   573

応援融通計画受電   100   100   100
北本連系         60    60    60

供給力合計      4315  5198  5338
プラス揚水       4995  5878  6018

これに対して需要量は

昨年夏最大需要量  5998  5998  5998
東電2011予測   5755  5755  5755
必要なピークカット   760     −     −
夏以外の需要量    5360  5360  5360 

精査するとピークカットの必要量はこれより多少増えそうだが、無計画停電などしなくとも需給調整契約の戦略的活用で対応できる可能性が大きい。

*注 横須賀火力発電所は、新潟柏崎原発が運転再開したのを受け、電力供給量過多のため2010年4月から長期停止中だった。
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1103290031/


●根拠3 2003年、東電は全原発をいっせいに止めたが、停電は起きなかった

日経新聞 2003年3月15日
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/242/242082.html

東京電力福島第一原子力発電所の6号機を点検のために停止する。原子力安全・保安院が平成14年10月28日に「福島第一原子力発電所1号機における格納容器漏えい率検査の偽装を踏まえた厳格な検査の実施等について」という通達を出し、それにもとづいて東電が平成14年12月12日に「運転中原子力発電所の格納容器漏えい率検査のための停止計画」を提出した。(浜田基彦)

夏のピーク時ではありませんが、原発をいっせいに止めても停電は起きませんでした。

ちなみに、この二週間前に停電を危惧する記事が同じ日経に書かれていました。

日経BPnet 2003年3月3日
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/233/233481.html
「東電の原発停止で予備率ゼロ、首都圏襲う電力「3月危機説」」

 この3月、首都圏はこれまでに経験したことがない「電力危機」に陥るかもしれない。電力会社は通常、天候による電力需要の急激な増加や、発電所の故障などの不測の事態に備え、需要に対し8%程度の予備電力(予備率)を加えて電力を供給している。その予備率が3月、ゼロになる。需要が供給を上回ると最悪の場合、一部に停電が発生することも考えられる。
 昨年8月に明らかになった東京電力原発トラブル隠蔽事件の影響で、東電管内の原発が自主停止や点検に追い込まれているためだ。東電は現在、福島県の福島第一、第二、新潟県柏崎刈羽の3カ所の原子力発電所に計17基の原発保有している。このうち、2月末までに13基が稼働停止。3月1日にさらに1基が止まり、このままだと4月15日までにすべての原発が停止となる。


今の停電は、火力発電も被災して復旧できていないためです。原発が止まったからではありません。

東京電力は今夏の電力供給不足を早くも訴えていますが、上の記事を見る限り、夏に計画停電を行うとしたら東京電力の怠慢以外の何物でもないでしょう。